「前向きな組織づくり」のヒントとは?ポジティブ組織開発でチームにエネルギーを取り戻そう【チームプロセスコーチ監修】

こんにちは!
Being and Relationの池田です。
「うちのチーム、なんとなく元気がないな…」
「前向きさが大事って言うけれど、どうすれば?」
そんな風に感じたことはありませんか?
昨今「ポジティブな組織づくり」が注目されていますが、ここで言う“ポジティブ”とは、ただ明るく前向きという意味ではありません。
困難な状況に向き合いながら、チームの力を信じて支え合い、乗り越えていく姿勢そのものを指します。
ポジティブ組織開発とは
ポジティブ組織開発(Positive Organizational Development)は、米国ミシガン大学を中心に発展してきた理論で、「人がベストな状態で働ける組織づくり」を目指すアプローチです。
まずは、ポジティブ組織開発の背景や特徴についてご紹介します。
ポジティブ組織開発の背景

近年の組織研究では、重視される価値観が大きく変化しています。
従来は、「大きくて強い組織」をいかに築くかが主な関心事であり、収益性・競争優位性・経済効率といった要素が重視されてきました。
しかし今日では、「人の成長」「豊かな関係性」「組織としての善さ」に軸足を置いた、人間中心の組織づくりが注目を集めています。
この流れの中で生まれたのが、米国ミシガン大学を中心に研究が進められてきたポジティブ組織開発(Positive Organizational Development)です。
ポジティブ組織開発の特徴
ポジティブ組織開発では、単に効率性や競争優位を追い求めるのではなく、人が活き活きと働き、自分の強みを発揮しながら成長できる組織の土壌づくりを重視します。
特に大切にされているのは、次のような状態です。
- 一人ひとりが強みを発揮できる
- 組織の中で自分らしく貢献できる
- 困難に直面しても自分たちで前進できる
そのような状態を実現するために、ポジティブ組織開発では「自分たちの誇れるところ」「存在意義」に光を当てることを大切にします。
つまり、「すでにある良さ」に気づき、それを対話や実践の中で育てていくことが、変化の出発点となるのです。
そして、ポジティブ組織開発の基盤には、「人の成長や力を信じる」トップやリーダーのあり方(姿勢・信念)があると言えるでしょう。
参考:米ミシガン大学 Positive Organization Scholarship(POS)
参考:米ネブラスカ大学 Fred Luthans教授 Positive Organization Behavior(POB)
ポジティブ組織開発の事例2つ
ポジティブな組織開発のモデルとして日本企業の事例を2つご紹介します。
※当事者の方々は「ポジティブ組織開発をやっています!」とは仰っていませんが、それぞれにアメリカのハーバード大学MBA、スタンフォード大学MBAの組織開発のケースとして取り上げられています。
ポジティブ組織開発の事例1.JR東日本テクノハートTESSEI

新幹線車内の清掃業務を担うJR東日本テクノハートTESSEIでは、かつて「きつい・汚い・目立たない仕事」と見なされていた清掃の仕事に、「新幹線劇場を支える技術者」という新たな意味づけ(リフレーミング)を行いました。
以下は、当時JR東日本から同社に来て取締役を務めた矢部氏のインタビューの抜粋です。
様々な施策を進める中で、ある女性の従業員が「私たちの仕事場は劇場です」と発表したのです。「お客さまが主役、私たちは脇役。新幹線劇場というステージの上で、お客さまと私たちが一緒になって素晴らしいシーンをつくっていこう」と。これは本当にびっくりしました。私の発想では絶対に浮かばなかった言葉です。従業員からこの言葉が出てきたということが大きかったと思います。いわゆる「リフレーミング」が行われたのだと思います。「清掃の時間」ではなく「新幹線劇場のショータイム」というふうに自分の仕事が再定義された瞬間でした。
引用:「7分間の奇跡」を実現する新幹線劇場誕生秘話|意味のあふれる社会を実現する|矢部 輝夫(テッセイ:株式会社JR東日本テクノハートTESSEI)
さらに矢部氏は、社員一人ひとりの生い立ちやキャリアを深く理解するための対話を重ね、制服の刷新といった細やかな施策にも取り組みました。
このケースで注目したいポイントは、仕事の意味が再定義され、自分たちの「重要感」が高まったこと。そして、それはトップである矢部氏が押しつけたのではなく、現場の社員から生まれたものだったこと。
結果として、社員一人ひとりの気持ちが変化したことで行動が変わり、成果が上がり、そして社会に貢献している実感も強まった。このようなポジティブな循環が生まれたのです。
ポジティブ組織開発の事例2.株式会社玉子屋

東京・大田区のお弁当会社「玉子屋」。創業当時は小さなお弁当屋さんで大卒社員が集まらず、創業者である菅原会長曰く「近所の悪ガキを集めて会社を運営するしかなかった」そうです。
菅原会長は「やるべきことを持つ元気な若者は、必ず成長し社会に貢献する」という信念のもと、褒めて育てるというやり方で社員たちに接していきます。
そんな中、同社が食中毒を発生させ一週間の営業停止になった際には、「悪ガキだった社員たちがお客さんに土下座してお詫びして回ってくれた。自分も一緒に回ったがあの事件があって今の玉子屋がある」とのエピソードも。
以下は、元地元の不良だった社員の方の話です。
「この会社に入って初めて人に褒められた。今の会長に褒められ、お客さんに旨かったよと言われて感謝された」
「営業の仕事でも配達の仕事でも答えがないから仕事は面白い。答えのある仕事はつまらないし自己成長にもつながらない。」
「褒められた」「信じてもらえた」──そんな経験が彼らの力を引き出し、やりがいや責任感を育てたのですね。
私たちが考えるポジティブな組織とは、「どんなメンバーでも自分らしく力を発揮できる器」。その土台には、「人は本来、より善くあろうとする存在だ」という前提があります。
外部環境の変化が速く複雑な今だからこそ、組織の中にある“良さ”に光を当て、それを最大限に活かす視点が、自分たちで持続的な成長を実現していくためにはとても大切です。
ポジティブ組織開発の実践方法
ポジティブ組織開発は、特別なスキルやツールがなくても、誰でもすぐに始められます。
第一歩として、チーム内で以下のような問いを交わしてみましょう。
- 私たちの組織(チーム)の誇れるところってなんだろう?
- 私たちがお客様に最も喜ばれているところってなに?

ポジティブ組織開発における問いに、明確な正解は必要ありません。
メンバーそれぞれの感じ方を大切にしながら、すでにある良さや強みに目を向ける対話を重ねていくことが、ポジティブな変化の原点になります。
プロセスの中で、自分たちの強みや可能性に改めて気づいたり、誰かの目がふと「キラッ」と輝く瞬間が生まれるかもしれません。
そうした小さな変化の積み重ねが、自律的に前進する組織づくりへとつながっていきます。
まずは1人ひとりの「良いところ/素敵なところ」を見つけてみることから始めてみませんか?
組織を超え、多様なリーダーや組織開発の実践者の方々とともに学び合いたい方は、ぜひ以下の学びの場にもご参加ください!
チームの「変化する力」を引き出したい方へ

チームや組織が継続的に成長していくためには、スキルの習得だけでなく、「リーダーのあり方」や「関係性」へのまなざしが欠かせません。
ポジティブチェンジコーチングは、リーダー・メンバー・組織に並走しながら、”自分たちで変化を起こし続ける力”を引き出す、法人向けの伴走型コーチングプログラムです。
「多様化する働き方に、マネジメントが追いつかない」
「業績は悪くないのに、現場が疲れている」
「変えたいけれど、どこから手をつけていいかわからない」
──そんな方へ、新しい一歩のヒントをお届けします。
御社のチームが”変化を力に変える組織”へと進化するきっかけをつくりませんか?
コラム一覧はこちら
コラムの書き手:株式会社Being and Relation 代表取締役 池田 佳奈子