女性が長く活躍できる専門領域担当チームとして。前例なき道のりの3年間の歩みとチームビルディングを振り返る

医薬品の卸売業を営む株式会社メディセオの、女性診療科領域を専門に情報提供活動などを行うチーム『ウィメンズコーディネーター』。新規事業チームとしての発足直後からBeing&Relationがチームづくりを伴走サポートさせていただき、まもなく3年が経とうとしています。
この3年間でどのような変化が見られたのでしょうか。ウィメンズコーディネーターチームの発足背景も踏まえながら、コーチ(講師)を勤める池田との対談形式でお話を伺いました。
対談メンバー
- 河西郁江さん(株式会社メディセオ AR研修部 部長)
- 飯田美保子さん(株式会社メディセオ AR研修部 東日本ウィメンズグループ マネジャー)
- 赤坂玲香さん (株式会社メディセオ AR研修部 西日本ウィメンズグループ マネジャー)
- 吉田奈緒美さん(株式会社メディセオ AR研修部 東日本ウィメンズグループ)
- 池田佳奈子 (株式会社Being and Relation 代表取締役)
導入プログラム
成果:
- 受動的だったメンバーの意識が前向きに変化していった
- メンバー同士の関係性が深まり、互いの個性理解につながった
- 営業スキルが強化され、獲得案件や売上が増加した
課題
- 新規事業チームとして発足したが、指針はあったが具体策が整理されていなかった
- 人事異動で集まったメンバーに戸惑いや受け身の傾向がみられた
実行施策
- 1年目 :チームの立ち上げ支援/管理職ポジションに対する定期コーチング
- 2年目:チームメンバーに対する営業力向上と振り返り支援
- 3年目:チーム拡大、新体制発足に伴うチームビルディングの支援
女性診療科領域を専門とする、女性による女性のためのコーディネーター
ーー最初に、『ウィメンズコーディネーター』について教えてください。
河西さん:メディセオでは、女性診療科領域の医薬品や予防・診断・治療等の情報を総合的に医療機関へ提供する営業担当者として「ウィメンズコーディネーター」を2022年4月に新設しました。地域に根差した専任の女性コーディネーターを各エリアに配置し、月経困難症・不妊症・更年期障害等に悩みを抱える女性が産婦人科医に気兼ねなく相談できるような社会をめざし活動を行っています。
ーー発足に至るまでにはどのような経緯があったのでしょうか?
河西さん:業界全体の傾向として、営業先である医療機関のドクターとのアポイントメントは診察時間終了後のため、夜になることが珍しくなく、子育てをしながら営業職を続けるのは現実的に厳しくもありましたが、時代の変化とともに営業担当者とドクターのコミュニケーションのあり方も変化してきています。その結果、子育てをしながらでも業務を担える環境が整いつつあります。こうした変化を受け、ライフステージの変化があっても働き続けられる女性の営業チームを作りたいという思いのもと、『ウィメンズコーディネーター』チームが立ち上がりました。
ーー働き方の多様性や女性活躍推進など、社会全体の意識が変わりつつありますよね。女性診療科領域を専門とされているのはなぜでしょうか?
河西さん:同性だからこそ、女性ならではの体の変調のことも理解しやすいですし、女性診療科に訪問しやすいという良さもあります。産科・婦人科は女性の患者さんが大半を占めるため、他の診療科に比べ、スーツ姿の男性担当者が待合室にいることに抵抗感を示すドクターが多いのです。
ーー活動内容にある「地域医療コーディネーター」とはどのようなものでしょうか?
河西さん:医薬品の提供にとどまらず、地域の顧客である医療機関、自治体、学校などが抱えるヘルスケア課題を抽出し、その解決策を提案することで新たな価値共創を目指しています。例えば、月経困難症の学生の患者さんがいるとして、普段の学校生活に支障をきたしている場合には、医療機関への受診だけでなく、教育機関と連携し出張授業を実施する活動が必要だと私たちは考えます。情報や知識に触れる機会をつくり、それが検診やワクチン接種といった予防行動の促進に繋がってほしいと思っています。
飯田さん:私たち従業員は地域の一生活者でもあるため、地域課題にも貢献していきたいと考えています。多くの方へ情報を広められるよう医療関係者だけでなく、一般の方へのアプローチという初めてのことにもチャレンジしてきました。私たちコーディネーターが地域の医療機関・自治体・学校・企業などを繋ぐ架け橋となって女性診療科の地域ネットワーク作りにも取り組んでいます。
ライフステージが変わっても活躍し続けられる女性チーム実現への思い
ーーチームの発足にあたり、スタート時の最初の壁のようなものはありましたか?
河西さん:会社としての指針はあったものの、
具体的な活動内容は自分たちに大きな裁量が与えられていました。そのためやりがいを感じつつも、立ち上げの頃は試行錯誤を重ねていましたね。
池田:それまでの河西さんのご実績から、新部署の部門長として白羽の矢が立ったわけですね。

河西さん:私自身が薬剤師で、お得意様へ医療情報の提供を行ったり、ドクターに疾患情報を執筆頂いたものをWebに掲載したりと、専門職を活かした仕事に取り組んでいたため任命されたのだと思っています。チームをつくるにあたり、女性社員の割合が高い薬事職の中にも営業職の適任者がいるだろうなと思いながらメンバー構成を検討していきました。その中で飯田さんを指名した記憶がありますね。
飯田さん:それまで長く薬剤師として支店におり、まさか自分が新部署のマネジャーになるとは思ってもみませんでした。
ーーどのような思いでしたか?
飯田さん:新たな部署として実績を上げたいという意欲はもちろん、メンバーの力になりたいという思いも強く持っていました。営業職に限らず、一般的にも女性にとって出産や子育てと仕事の両立は簡単ではないと感じています。だからこそ、一人ひとりがより働きやすい環境を築けたらいいなとも考えていました。
それに子育てと地域は切っても切れない関係です。女性目線や子育て経験を「地域医療コーディネーター」として活かせるのではないかと思い描いていました。
池田:社内に今までみられなかった働き方、活動の仕方でも成果を上げていける仕組みを作られたのですね。
河西さん:それまで営業職は男性、事務職は女性が多く、職種の転換は頻繁ではありませんでしたが、このチームが誕生してからは事務職から営業職への職種転換事例もあり、チームの存在が女性のキャリアアップの選択肢として貢献できていると感じています。
飯田さん:薬事職の中にも、外での活動に適性のある方がいる場合もあります。以前でしたら事務職や薬事職のまま職種転換無くキャリアを終えていたかもしれませんが、今では「チームに適任ではないか」という提案を全国からいただけるようになり、まさにDE&Iを体現しているのかなと思います。
池田:メンバーの皆さん、元々営業職!というくらいパワフルさがありますよね。
ーーメンバーの方が産休や育休を取得されたことはありますか?
飯田さん:20〜30代メンバーが多いためライフステージの変化は多く、産休・育休を取得するメンバーもいます。その度に新たなメンバーを迎えるので出入りは激しい方ですね。
ーーその都度、業務の引き継ぎや研修を行う大変さはありますか?
飯田さん:導入研修の仕組みを整えつつありますし、メンバーが育休明けにパワーアップして戻ってくるのはとても楽しみです!
池田:産休・育休から戻ってきて、また営業職を続けられるのはいいですね。
飯田さん:時間に制約はあるかもしれませんが、融通しながら取り組める環境だと思っています。大切なのは仕事に対する思いかな、と。
池田:お子さんの体調不良で急なお休みが必要になったりすることにチーム全体の理解があるからこそ、働き続けられるのでしょうね。
ーー管理職としてメンバーをマネジメントする上で、急なお休みなどにはどのように対応されているのでしょうか?
赤坂さん:1人1エリアを担当しているため、お得意様へのアポイントメントは後日に再調整をお願いしています。
飯田さん:そのようにお約束日に伺えなくなった場合は、私の方からお得意様へ連絡し事情をご説明するようにしています。ご理解と共に、温かいお言葉をいただいています。

池田:社内におけるフォロー体制もそうですが、“私たちはこういう働き方をしています”、“一生懸命取り組んでいます”と対外的理解を得ながら進めていくことも大切ですよね。それが働きやすい職場づくりに繋がる気がします。
自分たちで答えを見つけ走っていくために必要だったマインドセットの転換
ーーさてここからはプログラムについてお伺いします。導入いただいた背景をお聞かせください。
河西さん:チームが発足して間もなく、全国に点在しているメンバーをどうまとめていくべきか?と、とある方に相談したところ、まるで友人を紹介するような流れで池田さんをご紹介いただきました。
池田:ちょうど私も会社を立ち上げたばかりの頃で。どちらもスタートアップだから!という理由だけでしたよね、出会いのきっかけは。
- メンバーのキャリアが多様で、強みやスキルが互いに見えていない
- マネジメント機能は本社、メンバーは全国に点在し、一体感を出しにくい
- 新しい活動のあり方を目指したいが、具体的にすべきことが定まっていない
というのが主なご相談でしたので、まずはミッション・ビジョン・ゴールという目標を定めてはどうか?と提案しました。
こだわったのは、管理職の方々と私で決めるのではなく、メンバーの皆さんを巻き込んでアイデアを集めるという点。オンラインで全メンバーに参加してもらいながら対話形式でまとめていきました。

河西さん:初回は白熱し過ぎましたよね。全員が主体的に参加してくれて驚いたのを覚えています。
池田:なぜ私たちがこの作業をする必要があるの?という戸惑いもあったと思います。これまで、方針は経営陣が決めることだと漠然と思い込んでしまっていた。でもこれからは答えのない時代の中、自分たちで走っていかないといけない。マインドセットの転換が必要だと感じ、まずはみんなで話す時間を設けることにしたのです。
飯田さん:その後、研修内で重要活動項目とKPIを設定するところまで落とし込めたことで、最終的にはメンバーも腹落ちできたのではないかと思います。目標達成のために啓発活動をやっていこうという意識づけにも繋がりました。
ーーご支援内容は初年度と2年目で変わったのでしょうか?
池田:自主性も見えるようになり、更なるスキルアップをということで2年目は営業の基礎研修や、応用編として提案営業研修を実施しました。
ーー3年目からは、エリアを東西に分けたチーム体制になったのですね。
池田:メンバーの人数も増え、東西に別れたチームビルディングやこれまでの歩みの振り返りを実施しました。
赤坂さん:体を動かすアクティビティの研修プログラムも楽しかったです。東西で特徴が明確に分かれていましたよね。私たち西日本エリアチームは「数をこなせー!」という勢いが凄くて。
池田:この研修では、考え過ぎてトライ数が少なくなる傾向があるのですが、ウィメンズコーディネーターの皆さんには「まずやってみよう!」というパワフルさがあって。その力は新規事業のチームとしてとても重要なコンピテンシーですし、やっぱり集まるべくして集まったメンバーなんだなと感じましたね。一歩踏み出せないチームって意外と多いものですから。
赤坂さん:西日本エリアの特徴として、トライはするけど最終的な分析は苦手傾向にあるかなとも感じました。目標が定まるとパワーを発揮するチームなので、適切な目標設定が今後のチームの成長に必要だなと改めて思いました。
飯田さん:それに比べると東日本エリアは分析派・慎重派のメンバーが多いかもしれません。でも皆、熱い思いを胸に秘めて活動しています!
吉田さん:東日本エリアは通常業務の中でも「こうしたらもっと良くなるよね」という意見をよく耳にします。
赤坂さん:東日本エリアと西日本エリアの特性がミックスされると丁度良さそうですね!

一人ひとりを活かすチームマネジメント力で、次なる展望へ
ーーチームをまとめるマネジャーというポジションから見た研修の成果をお聞かせください。
飯田さん:自分も含め得意不得意がそれぞれにあり、それを互いが理解していれば補完しあえる、それがチーム力アップに繋がることを実感し、マネジャーだからといって抱え込み過ぎる必要はないんだなと思えるようになりました。研修の過程でメンバーの意外な得意分野が発覚して驚くこともあって。であれば業務においても、得意な人に任せていくことでチームがスムーズに動くのでは?と、それを見極めて業務を割り振るようになりました。マネジャーとして、そういった面を学べていることも成果の一つかなと思います。
赤坂さん:業務内のやり取りだけではメンバーの“人となり”がわかりにくかったのですが、研修では素の部分が垣間見え、それが私にとっては大きな成果でした。比較的若く社歴の浅いメンバーが多いため、強みは伸ばし、弱みは…強みでカバーできるならそのままでもいいし、などバランスをみながら一人ひとりに合う示し方がマネジャーとして必要だということを研修で勉強することができました。そして、メンバーも私を見てくれているので一層気を引き締めなくてはと思っています。
池田:マネジャー陣の皆さんの関わり方も印象的でした。河西さんは対話の場を押し付けずニュートラルに見守っていらして。飯田さんと赤坂さんは統制しすぎず、メンバーの気持ちにも寄り添いながらまとめていらっしゃって。それが、お互いに言いたいことを言い合えるチームの秘訣かもしれませんね。
ーー最後に、ウィメンズコーディネーターチームの今後の展望をお聞かせください。
河西さん:2025年度から4年目に入ります。ここからはより真価が問われるフェーズになっていきます。これまでは新規事業部に携わるべく集まったグループとして、チーム組成やブランディングに重心を置いてきましたが、今後は活動内容の質をどう高めていくかが課題です。社内的にも対外的にも質を評価してもらえるよう、より具体的に実績を積み上げていきたいと考えています。
池田:新規事業チームならではの課題や壁にぶつかりながらも、メンバーの皆さんは日々地域医療のために頑張っていらっしゃいますよね。皆さんの益々のご活躍が楽しみです。
ーー皆さま、本日はありがとうございました。
研修に参加したコーディネーターの方々に、研修の感想を伺いました
Aさん:1年目に実施したビジョン・ミッション・ゴールの策定が印象的で、悩んだ際に立ち戻ることができています。研修を通じてメンバーとの関係性が深まり相談できるようになりました。
Bさん:フラフープを使用した研修プログラムではメンバーの得意なことが判明して面白かったです。チームの結束力が高まり、メンバーの考え方を知ることで役割が明確になったと思います。
Cさん:自身の考えに限界があり進めなかった中でメンバーからアイデアやアドバイスをもらい、新たな視点を得ることができました。グループメンバーで試行錯誤しながら一緒に何かに取り組む機会が無かったため、フラフープの研修プログラムが印象に残っています。
Dさん:チームにとってのメリットや貢献できる点が何かを考え業務を進めるようになりました。チームの方向性やメンバー、管理職の方々の考えを再確認できました。
<チームで行うアクティビティプログラムの様子>


◆◆株式会社メディセオ「ウィメンズコーディネーター」について
女性診療科領域の医薬品や予防・診断・治療等の情報を総合的に医療機関に提供するために2022年4月に新設された女性メンバーで構成されているチーム。
「地域の全ライフステージの女性が生き生きと生活できる社会の実現」をビジョンに、そのためのミッションとして「女性診療科領域における地域医療コーディネーターとなり、女性の全ライフステージにおける健康を『ささえ・つなぐ』ことに貢献する」を掲げています。
この取り組みでは専任の女性コーディネーターを各エリアに配置し、地域のすべての女性が毎日健康に過ごせるよう、疾患啓発にも少しずつ取り組んでいます。